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なんかいろいろ書いたりしてます
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「このお菓子の味って何かに似てる。」
彼女の目は一点を見据えたまま動かないでいる。

薄桃の唇から零れ落ちる言葉の端々を、ひとつたりとも漏らさないように耳を研ぎすます。ブルーベリータルトの酸味が口に広がる。
時間が過ぎていく。夕方だった。

「ねえ」
視点は動かない。手元のコーヒー・カップを見つめたまま彼女の言葉は零れ落ち続ける。

ねえ。

責めるように繋がれた言葉から逃げるように僕はコーヒーを口に含む。苦い。ブラックだ。

「……わからない?」
僕は何も言えずにいた。
日が落ちていく。

喫茶店は静けさの中へと落ちていく。
時間の止まったこのテーブルを残して。世界が終わる。
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  • 2014年08月12日
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